マウスピース矯正は、矯正方法の一つとして近年注目を集めています。
矯正治療をしたいと思っても、「費用が高い」「通院の手間がかかる」といった理由から、矯正治療に踏み切れない方もいらっしゃるかもしれません。
そのため、「市販のマウスピースで手軽に矯正できたらいいのに」と考える方もいるでしょう。
今回は、市販のマウスピースで矯正治療が可能かどうか、また市販のマウスピースと矯正用マウスピースの違いについても解説していきます。
1. 市販のマウスピースで矯正はできない
結論から言うと、市販のマウスピースで矯正治療はできません。
市販のマウスピースには、歯を移動させて歯並びを治す効果はありません。
市販のマウスピースでも歯並びを治せると考える方もいらっしゃるかもしれませんが、矯正治療目的で使用すると逆に歯に悪影響を及ぼす可能性があります。
矯正治療には、正確な歯の動きや位置の調整が必要です。
また、フィットしないマウスピースを使用すると、歯に過度な圧力がかかり、歯や歯茎、顎関節に負担をかけるリスクがあります。そのため、自己判断で市販のマウスピースを矯正目的で使用することは避けるべきです。
2. 市販のマウスピースの目的
市販のマウスピースはどのような目的で使用されるのでしょうか。
市販されているマウスピースの多くは、主に歯ぎしりや食いしばりを防ぐ目的で使用します。
歯ぎしりは、天然の歯や詰め物被せ物を傷つけたり、すり減らしたりすることがあります。
また、頭痛や肩こり、顎の痛みといった身体の不調を引き起こす要因となることもあります。そのため、歯ぎしりを軽減するための市販マウスピースが数多く販売されています。
その他にも、いびきを軽減するために気道を広げる効果を持つマウスピースや、スポーツ中に歯を保護するためのマウスピースも販売されています。
このように、市販のマウスピースは主に歯の保護や健康を守る目的で作られており、矯正治療には適していません。
3. 市販のマウスピースと歯科医院で行うマウスピース矯正の違い
次に、市販のマウスピースと歯科医院で行うマウスピース矯正の違いについて以下の5つの観点から解説していきます。
①目的
市販のマウスピースは、主に歯ぎしりや噛み締めから歯を守る目的や、いびきを軽減する目的で使用されます。
これらは夜間の就寝時に装着され、歯や顎を守るために作られています。
一方、歯科医院で行うマウスピース矯正は、歯並びを整えることを目的としており、長期的に少しずつ歯を動かして理想的な歯列を実現する治療法です。歯科医師の指導のもと、専門的な治療計画に基づいて行われます。
②作製方法
市販のマウスピースは、既成品やお湯で柔らかくして自分で成形するタイプが多いです。しかし、これらは必ずしもぴったりと歯に合うわけではなく、フィットしないこともあります。
一方、歯科医院で行う矯正で用いるマウスピースは、レントゲンやデジタルスキャンを使って正確なデータを取得し、そのデータをもとにオーダーメイドで作製されます。個々の歯に合うように精密に作られています。
③見た目
市販のマウスピースには、透明のものだけでなく、青などの色付きのものもあり、形も歯全体を覆うタイプのものが多いです。そのため見た目は装着していることがわかるものがほとんどです。
一方、歯科医院でのマウスピース矯正では、透明で非常に薄いマウスピースが使用されるため、目立ちにくく、日中でも装着していることがわかりにくいです。
④費用
市販のマウスピースは比較的安価で、通常数千円程度で購入できます。
一方、歯科医院でのマウスピース矯正は高価で、数十万円~百万円程度の費用がかかります。
⑤効果
市販のマウスピースは、歯ぎしりやいびき防止の目的で使用されるため、歯を動かす効果は期待できません。矯正目的には使えず、咬み合わせや顎の調整も不可能です。
一方、歯科医院で行うマウスピース矯正は、段階的に歯を動かし、最終的に理想的な歯並びを目指します。複数枚のマウスピースを使用し、定期的に交換しながら治療が進むため、治療効果は明確です。
4. 市販のマウスピースを矯正治療に使用するリスク
最後に、市販のマウスピースを矯正治療に使用した場合に考えられるリスクについて解説していきます。
①全て自己責任となる
歯科医院で行う矯正治療は、治療計画や経過の管理はもちろん、治療中に歯周病やむし歯が発生した場合も適切に対処できます。
痛みやトラブルが発生した際も、歯科医院で行う矯正治療のように即座に対応できず、重大な問題を引き起こす可能性があり、これらのリスクはすべて自己責任となります。
②歯にダメージを与える可能性がある
矯正治療では、多くの場合歯並びを整えるだけでなく、上下の咬み合わせも矯正します。歯科医院での治療では、これらを考慮した精密な計画が立てられますが、市販のマウスピースではこれらを治すことはできません。また、自己判断で歯に負荷をかけてしまうと歯にダメージを与える可能性もあります。歯にダメージが加わると歯の寿命が著しく短くなることもあります。
③歯並びを治す効果はない
歯科医院で行うマウスピース矯正は、複数の異なる形状のマウスピースを順番に使用し、少しずつ歯を動かしていく治療です。市販のマウスピース1枚では、このような段階的な調整は不可能で、歯並びを治すことはできません。
歯科医院で行う矯正治療は、歯科医師の精密な診断のもとに進められます。市販のマウスピースを使用する場合、こうした専門的な診断や管理はなく、望ましい歯の移動は期待できません。
市販のマウスピースは歯ぎしりやいびき防止用であり、矯正治療には使えません。
矯正治療を行いたい場合は、歯科医院での正確な検査、診断やマウスピース作成が必須となってきます。
歯並びに関するお悩みがある方やマウスピース矯正をご希望の方は、ぜひ神戸三ノ宮駅前デンタル矯正歯科までご相談ください。
監修:神戸三ノ宮駅前デンタル矯正歯科
院長 長谷川教子